シリコンバレー起業家は凄かった
講演をしたのは以下の二人。
冨田龍起
operaを作っていた一人。最終的には副社長まで務めたようです。今はVivaldiというブラウザを作る会社やorbwebというカメラ向けソフトウェア開発の会社をシリコンバレーでやっているとのこと。
この人の凄いのは、operaが話題になり始めた時に開発チームに意見メールをしたこと。ノルウェー発のソフトなので日本語対応などには弱い部分があったんでしょう。そのメールがきっかけとなって「ノルウェーに来なよ。一緒にやろうよ」と誘われて人生が一変。
さらっと生い立ちとして話してましたが、これは凄いことです。ノルウェー語はおろか英語だってままならなかったであろうにメールを送っちゃう。当時は退職して大学に通っていた学生だったようで、何の見返りもなさそうなのに、もっと言うと鼻白まれてしまうかもしれないのに、それでも当時IT業界のホットな話題となっていたoperaの開発チームにメールをさらっと送る胆力。
傍から見ると雲の上の存在のように感じても、相手もただの人間です。素朴な意見を求めているんですね。新しいことをやっている人に興味を持ち「何やってんの?」と覗き込み、「僕こう思うよ」と言う。たったそれだけのことが多くの人にはできないんでしょう。求められているのに。
もうひとり。
本間毅
ITバブル前夜にウェブ制作の会社を学生起業した人。ホリエモンとかと同じ世代の人ですね。この人の凄いのは起業した会社をたたみ、sonyや楽天で会社員としては大成功していたにも関わらず、苦い思い出のある起業をもう一度したこと。
今自分がやりたいことは起業しないとできないと思ったから、と理由を語っていました。「人生は凌ぐもの」ではないんだということです。給料を歯を食いしばって守り続けるのが人生ではなくて、自分の発想が世界を良くしていけるんじゃないか、と価値を問うてみることが生きるということなんだ、ということでしょうか。自己実現の先にある社会への貢献ですね。
もう一度起業してまでやりたかったこととは、「100年前から進化の乏しいアメリカの住宅事情を、日本流のスマートホームで変えたい」ということです。
僕がなんとなく感じ取ったこと
当たり前のことだけど、やっぱりどうも何かを形作るためには協力者が非常にヒジョーに重要なようです。どうしたら協力者が現れるかというと「面白そうなことをやり続け、それを発信し続ける」というシンプルだけど難しい日々の行動の積み重ねのようですね。
以下お二方が語っていたことをざっくり(どちらの方が語っていたかは割愛します)
いかに早く最初の失敗をするかが大事
小さく初めて(small start)して、はよ失敗せー(Fail fast)
ということです。その失敗が成功への最大の糧になるとのこと。
日本にはこういったスピード感がない、ということも言ってましたね。手続きとか根回しよりプロトタイプを優先すべし、なんでしょう。出る杭は尊敬され協力されるシリコンバレーの文化なのかもしれません。
イノベーションには多様性が一番効く
性別、年齢、地域(人種、民族)に多様性がある組織ほど、イノベーションも生まれやすく、パフォーマンスも高いというマッキンゼーかなんかの研究結果を紹介してました。
ただし留意点あり。同質的組織と比較して以下の場合はパフォーマンスが劣るとのこと。
- 正しくマネージメントされていない場合
- 組織ができて初期段階
日本は良い人材が起業しようとしない
アメリカでも日本でも、頭がよくて努力もできる人材は良い大学に行くが、卒業後の進路の傾向が違う。日本は大企業か公務員、アメリカはとりあえず起業。
起業して失敗しても、その失敗を経験として評価する文化があるため、早いうちから起業するのだそう。
たしかこの本に書いてあったけど、アメリカでは起業家を貴重な社会資源として教えているようです。起業する人が誰もいなかったら、会社員になることもできないんだから当たり前といえば当たり前ですよね。
起業する能力と意思がある人を、社会が育み協力して社会の役に立ってもらおう、という思想なんでしょう。
日本でシリコンバレーのような革新の連鎖を起こすには?
- 多様性!多様性!日本が好きで日本で働きたい人はたくさんいる。IT技術者だけでもいいから、移民を積極的に受け入れられる環境を国が率先して作ってほしい。あと受け入れをする会社の社内公用語は英語にしたらどうかね。楽天みたいに。
- ビジネスで成功した人が面白い起業家にお金とノウハウを投資する文化を作ること。担保用意して銀行で借金しないと資金調達ができないし、起業したら孤独な戦いのようになってしまう現状では、起業家は二の足を踏む。
- 失敗した起業家を評価してあげてほしい。やり直しがきかなければ起業家は二の足を踏む。
- 日本人はシリコンバレーでもどこでも、どんどん出ていったらいい。どうせ内需は先細り。国外で得たノウハウを国内にフィードバックすれば、日本の文化も少しは変わるかもよ。
以上、レポートでした。
講演の正式名称は「SVJPシリコンバレーセミナー〜シリコンバレーで活躍する日本人起業家による講演〜」だったと思います。